ITT-CANNON社が開発したコネクター。キャノンコネクターと呼ぶのが一般的。世界中で業務用として認知され様々な用途で使われている。
キャノンコネクタという名前は開発元であるITT-CANNON社の社名から来ている。キャノンコネクタは以下のように分類される。
XLRキャノンタイプコネクタの分類 画像 正式名称 種類 主な用途 オス/メス属性 音声用の型番号 ソケットプラグ プラグ ケーブル側に使用 メス
コンタクトが露出していないXLR3-11C ピンプラグ オス
コンタクトが露出しているXLR3-12C 角形フランジ
ソケットリセプタクルリセプタクル 機器側に使用 メス
コンタクトが露出していないXLR3-31F-77 角形フランジ
ピンリセプタクルオス
コンタクトが露出しているXLR3-32F-77
画像内の※部分には内部のピン数が入る。一般的に3ピンであるが2ピンから7ピンまで存在する。あえてピン数の違うコネクタを使い、誤配線を防ぐ使い方も見受けられる。
(利点と欠点)
他のコネクタに比べてキャノンタイプコネクタは、内部にあるピンの電流容量が非常に大きい(詳細は下の表を参照の事)ことから電源コネクタとしても使われる事があるがオーディオ用に用いられる事が多い。それは、
という利点があるからである。このように隅々まで配慮されて設計されている事が今現在、平衡回路の接続においてスタンダードな地位を占め、業務用・放送用機器あるいはハイエンド向けAV機器に多く使用されている。そのためか音質が良いコネクターと認識されることもあるがこのように業務用途での使い勝手が良い事が採用の理由であり、キャノンコネクタと音質には直接の関係はない。メスのキャノンコネクタの1番ピンが他のピンに比べて若干長くなっていて接続時に機材同士の電位差を解消してから他の線を接続することが出来る、よって接続時のノイズを回避する事が出来る 3ピンのコネクタを使ってバランス伝送を行う事が出来る 標準プラグ等とは違いそれぞれのピンが一つの信号のみで独立している 信号が流れる導体部分が露出しておらず強固 ロック機構が付いていて接続後、外れる心配がない キャノンコネクタのついたケーブルは通常、両端がオス/メスで作られているため、延長用にコネクタが不要であるから容易に延長出来る 舞台で使ったとき、照明の光が乱反射しないようにコネクタの表面が梨地加工を施してある
ただ1本のキャノンコネクタのついたケーブル(以下キャノンケーブル)で1つの信号のみ伝えるするので、ステレオ音声信号でバランス伝送を行う場合はキャノンケーブルを2本用意しなければならない。
(延長性を考えたオス/メスケーブル)
標準プラグなどもあてはまるが、通常の電子楽器の接続には両端がオス/オスのケーブルが用いられる。しかし、キャノンケーブルはケーブル延長の容易性を考え、ケーブルの両端がオス/メスの組み合わせになっている。ミキサーにマイク接続する場合、ミキサー側にオスを差し、マイク側にメスを接続するように統一されている。マイク側がオスで出力(出し)、ミキサー側がメスで入力(受け)なので、これを俗にオス出しメス受けという。キャノンコネクタの場合は出力側をオス、ミキサ等入力側をメスにすることが一般的になっている。
もしこれが逆でミキサー側がメスでマイク側がオスでファンタム電源を使ったら、オス側はピンが裸で露出している為、手や金属で接触するとショートしてしまい、事故に繋がるからこのような形になっている。しかしながら、古い機材や一部の放送局では、ファンタム電源を使わないようなキャノンコネクタによるSTEREO OUTやLINE OUTではメス出しオス受けの機材が存在する。こういった機材に対応するため、まれにオスメス両方のコネクタがパラレルで装備されているものも存在するが、このような問題の場合は、オスオスケーブル(両端がオスとオスのケーブル)やメスメスケーブル(両端がメスとメスのケーブル)を使う事によって回避する。
キャノンコネクタの発売元であるITT-CANNON社の型番号は以下の通りである。
XLR - 3 - 11C - ** シリーズ名 XLR…オーディオ用の標準品
XLA…XLRの普及品
XLG…高音質タイプ(※)コンタクトのピン数
(2〜7) シェル形状数字が偶数:オス属性
数字が奇数:メス属性
11C…ソケットプラグ
12C…ピンプラグ
13…丸形フランジソケットリセプタクル
14…丸形フランジピンリセプタクル
31…角形フランジソケットリセプタクル
32…角形フランジピンリセプタクルモディフィケーション F77…スモールフランジリセプタクル
F502…小口径ブッシングタイプ(プラグのみ)
F512…ミニフランジリセプタクル(ピンタイプのみ)
A176…金メッキコンタクト
(※)XLGシリーズコンタクト部分にLC-OFC(Linear Crystal Oxygen Free Copper,直線結晶無酸素銅)の結晶を大きく成長させて結晶粒界のすきまを少なく作った銅素材を使用したシリーズ。LC-OFCは純度99.995%で1mあたりの不純物結晶数20個、導電率100%と言われている。
キャノンコネクタを使えばバランス伝送を行う事が出来る。キャノンケーブルによる音声の平衡接続(バランス接続)に於いて信号線の正相(HOTと呼ぶ)を2番ピンにするか(ヨーロッパ式)、3番ピンにするか(アメリカ式)は長い間混乱していたが、AESにより1992年に2番ピンをHOTとすることで規格化され、以降は2番HOT(ヨーロッパ式)が国際標準となった。放送局やPA関係はほぼヨーロッパ式になっているが、レコーディングスタジオではいまだにアメリカ式を採用しているところがあるので結線時には確認の必要がある。
キャノンタイプコネクタのピン属性 画像 ピンの番号 ヨーロッパ式属性
現在はこちらに統一アメリカ式属性
スタジオはこちらの可能性あり
クリックすると拡大表示されます1番ピン グラウンド(GND) グラウンド(GND) 2番ピン ホット(+) コールド(-) 3番ピン コールド(-) ホット(+)
バランス伝送に関する事柄はバランス伝送の解説ページを参照の事。
業務用コネクタとして放送局など様々な場所で使用されている。
バランス伝送が出来るのでケーブルを様々な場所を引き回すような機材(マイクなど)からの音声信号電送によく使われる。
スピーカーの入力端子にキャノンコネクターを使われる事がある(大概はスピコンケーブルである。)。
ミキサーの入出力(主にマイク系統など)に使われる事が多い。
キャノンコネクタが標準的な物となった今、様々なメーカーでキャノンコネクタを製造するようになった。しかしながら、一部のメーカーにおいて、多極コネクターのピン配列が違う物が存在している。また、6極コネクターに対して5極コネクターは構造上接続する事が出来てしまうので注意が必要。これをふまえ、6極とは配置が若干違っている6Aという物も存在するが、6と6Aでは互換性はない。
XLRキャノンプラグもどきとして本来の製品と肩を並べて販売されていることがある。これは製造元は不明であるが朝鮮方面ではないかという推測。価格がITTが販売している正規のものよりも1/4であったりする。通称キャノンもどき。このキャノンもどきは、使用上、正規品と比べて何も問題は発生しない為、放送局、スタジオなどでも多くの場面でこのもどき版が普及している。このように普及した理由は正規品が他のコネクターと比べて高価であるということ。スタジオなどでどうしても必要であることから、需要が非常に高い。したがって高くても買ってくれるという環境から、高い値がついている。もどきと正規品の見分けは型番が刻まれているかどうかで判別することが出来る。値段が安くて等品質であれば、もどき版を使用したいという放送局、スタジオでのコストダウンが見受けられる。